No371 (2008/12/31)
図解Keelingのグラフ解釈に対する考察 その10 番外編2
今年最後の更新です。HP管理者からで
連載してきた『図解Keelingのグラフ解釈に対する考察』を一つのPDFファイルにまとめて公開しました。まとめるにあたって、差障りのある表現や文章は割愛しました(この文章の内容は別に目新しい内容ではありませんので、私としては割愛した部分が一番重要ですが・・・。笑)。
この一年間で人為的CO2地球温暖化仮説に対する総括を行うという目標でしたが、これが最終的な結論です。
@大気中CO2濃度上昇の主因は自然現象。
A大気中CO2濃度の上昇によって全地球的に気温が上昇するという事実は観測されていない。
人為的CO2排出量削減による温暖化対策などという虚構と決別の判断を下す時が来ているのです。
No370 (2008/12/24)
図解Keelingのグラフ解釈に対する考察 その9 番外編
だいぶ長々と連載を続けてきましたが、とりあえず今回で終わりとします。連載の内容について異論・反論があれば是非お聞かせください。感情論は別にして、理論的なご意見についてはまたこのコーナーで取り上げたいと思いますのでご協力をお願いいたします。
今回の連載はかなりくどい内容になっています。書きながら自分でも嫌になっていたのですが(笑)、人為的CO2地球温暖化教の熱心な信者の方を改宗させるためにはいたし方の無いことだと思いますので、ご容赦ください。
書きながら思ったのですが、人為的CO2地球温暖化仮説というもののそもそもの誤りの始まりは、人為的なCO2が選択的に大気中に蓄積するなどという馬鹿げた事を誰かが言い出し、その自然科学的な検討を誰も行ってこなかったことに端を発していると感じました。なぜこのような馬鹿なことが起きたのか、科学史的にも非常に特異な例だと感じます。
例えば、多少密封性が完全でない箱の中にA、B、C、D、・・・という気体が体積比でa:b:c:d:・・・で一様に混合した気体を注入して行けば、箱の中に存在する気体A、B、C、D、・・・の体積比はa:b:c:d:・・・になるのが当然ではないでしょうか?A、B、C、D、・・・という気体が種類の異なる気体であれば、例えば箱を作っている素材がAという気体だけを選択的に良く透過することの出来るフィルターであれば、箱の中の気体Aの体積比をaよりも小さくすることが出来るかもしれません。
では、気体A、B、C、D、・・・は同じ気体ですが、発生源が違うだけだとします。この場合はどうでしょうか?化学的な性質に差のない同種類の気体の中から特定の発生源の気体だけを分別することが果たして可能でしょうか?人為的CO2蓄積仮説はこれが可能だと言っているのです。もしこれが可能なのであれば、大変なことになります。物理学の基本法則であるエントロピー増大測が書き換えられることになるはずです。
人為的CO2蓄積仮説は、ごく普通の常識を持つ人から見ると『変だな』と感じるはずです。それが『公には』庶民のみならず研究者からさえも異論の声がほとんど上がらないのはなぜでしょうか?この現象は『裸の王様』の寓話の具現化だと思っています。何らかの権威、何らかの利害関係によって不条理なことが真実なのだと思い込まされているのです。恐ろしい世の中です。
インターネット社会に代表される情報公開が進んだ社会では権力の情報隠蔽や虚偽情報は存在しなくなるという幻想がありますが、そのようなことはないようです。溢れる情報はガラクタのような情報ばかりで、真実はガラクタ情報に埋没し、また、情報の受け手には情報の真偽を判断する能力が無ければ、情報など無意味です。むしろインターネット社会ほど大きなウソがまかり通る、権力による情報操作社会です。NHKの報道を見てください!
おそらくこのような状況の中で人為的CO2蓄積説や人為的CO2地球温暖化仮説に異を唱えることの出来るのは、『裸の王様』の寓話の中の子供たち、つまり人為的CO2地球温暖化仮説の利権構造の枠の外にいる人たちなのだと思います。子供たちの声に大人たちは目を覚ますことが出来るでしょうか・・・?
No369 (2008/12/23)
図解Keelingのグラフ解釈に対する考察 その8
3.結論と考察
まず、大気と地表環境との間でCO2がどのように移動するのかを合理的に表すモデルを検討しました。その結果、大気中に存在する全てのCO2が同じ確率で地表環境に吸収されるという循環モデル以外に合理的なモデルは無いことを示しました。
循環モデルでは、年間吸収率は非定常に変化すると考えられますが、級数和の形で表現される大気中のCO2濃度は近い過去の影響程大きく、遠い過去の影響は小さくなります。その結果、大気中のCO2濃度の構成比率は着目年次の地表環境のCO2排出源毎の排出量比率で近似的に推定できます。人為的CO2排出=化石燃料の燃焼量の影響のように単調に増加する場合は、着目年における排出量比率を用いて推定した値は多少大きめに見積もった推定値になります。
この結果を用いて推定した最近40年間の大気中CO2濃度構成を再掲しておきます。
| 現在値 | 40年前 |
年間排出量 | 大気中濃度 | 年間排出量 | 大気中濃度 |
| 化石燃料燃焼 | 6Gt/年 | 10.9ppm | 3Gt/年 | 4.7ppm |
| 呼吸(陸上生態系) | 50Gt/年 | 91.0ppm | 50Gt/年 | 77.6ppm |
| 非生物(風化・海洋とのガス交換) | 150Gt/年 | 273.1ppm | 150Gt/年 | 232.8ppm |
| 合計 | 206Gt/年 | 375ppm | 203Gt/年 | 315ppm |
| 年間吸収率 | 0.242 | 0.278 |

この結果から明らかなように、現在大気に含まれる人為起源のCO2量は、最大でも全体の6/206≒3%にも満たないのです。
Keeling曲線に表されたCO2濃度変動から取り除かれた長期傾向(上の図の緑で示した線に対応します)=人為的なCO2の蓄積量という気象学会誌『天気』の河宮氏の主張や、これを踏襲する標準的な人為的CO2地球温暖化仮説は科学的な考察を怠り『人為的CO2蓄積説』を妄信した結果、大きな誤りを犯しているのです。
今回示した内容は、エントロピー増大則、IPCCによる炭素循環、KeelingのCO2観測値だけから一体何が結論できるのかを検討してきました。その結果、私たちの分析対象期間において大気中CO2濃度の時間変化率が気温の一次関数として近似できることが分かりました。CO2濃度が増加傾向を示しているのはこの間の気温がCO2濃度が定常状態になる気温よりも0.6℃ほど高めに推移していることが原因なのです。
ここまでの議論は事実以外のことには出来るだけ触れずに進めてきましたが、最後に少し推論してみることにします。気温が高くなったことによってどうして大気中のCO2濃度が高くなるのか?具体的な現象を考えてみることにします。
循環モデルの中で変化する要因は、地表環境のCO2排出源の変動(構成比と絶対量)と地表環境の吸収率の二つです。ここまでは議論を単純化するために、排出源については化石燃料燃焼以外は変化しないものとしてきましたが、実際には少なからず変化していると考えられます。
まず排出源から考えてみます。炭素循環図から排出源は影響の大きい順に、海洋のガス交換(90Gt)、陸上における土壌風化(60Gt)、陸上生態系の呼吸(50Gt)そして化石燃料燃焼(6Gt)です。この中で、化石燃料燃焼以外は全て気温上昇によってCO2放出量が増加すると考えられます。
しかし、呼吸については単純に増加するとは言い切れません。近年の森林の減少、砂漠化の進行によって生態系が全体として縮小傾向にあるためです。
以上から、気温上昇によって排出量が確実に増加するのは海洋におけるガス交換と陸上における土壌風化です。冒頭に示した大気中CO2濃度の構成の中では、この二つを併せて『非生物』として分類しています。元々構成比率の最も高い非生物系ですから、気温変化に対するCO2排出量の最大の変動要因だとして間違いないと思います。
次に吸収源について考えることにします。吸収源は影響の大きい順に光合成(110Gt)、海洋のガス交換(90Gt)に二分されます。
光合成の活性度は気温が上昇することによって高くなります。また、気温上昇による生育域の増加の可能性もあります。一方、前述のように森林の減少や砂漠化の進行が進んでいます。この相反する影響がどうなるかを判断するだけのデータを知りませんので、これについては意見を保留しておきます。
海洋のガス交換につきましては、気温の上昇は吸収率の減少につながります。
以上から、CO2排出源であり同時にCO2吸収源である地表面=大気との接触面の7割にも及ぶ海洋の気温による特性の変化が気温上昇に伴う大気中CO2濃度の上昇の最大の要因だと考えられます。次に重要なのは生態系の活性度(呼吸と光合成)の評価ですが、これについては極めて複雑な生態系の状態を把握することが必要であり、評価はかなり困難であろうと思います。
No368 (2008/12/22)
図解Keelingのグラフ解釈に対する考察 その7
2.Keeling曲線の示唆するもの
2-4 CO2濃度の上昇の原因は高温状態
槌田氏の指摘にしたがって、世界月平均気温偏差そのものと大気中CO2濃度変化率を比較することにしました。世界月平均気温偏差は、世界月平均気温偏差の時間に対する変化率を逆に積分することに相当します。微分の逆操作なので1/4周期だけ位相が戻ることになります。つまり、気温偏差の変化率を示す曲線を座標軸の正方向に1/4周期だけ移動することになります。

大気中CO2濃度と世界月平均気温偏差の特徴的な変動周期はばらつきはあるものの4年周期程度、大気中CO2濃度と世界月平均気温偏差との位相差は1年程度です。つまり、世界月平均気温偏差を表す曲線と大気中CO2濃度の変化率を表すグラフは位相差無く重なる=同期するはずです。実際のデータについて求めたグラフを次図に示します。
図に示すように、世界月平均気温偏差と大気中CO2濃度変化率を表す曲線は見事に同期することが分かります。つまり、気温と大気中CO2濃度の変化率の間に線形の関数関係があると解釈することが出来ます。この関係をもう少し詳しく見るために、同じデータに対する散布図を示します。
散布図に対する回帰直線から、大気中CO2濃度変化率を表す関数 y は世界月平均気温偏差 x を独立変数とする一次関数として y = 2.39x + 1.47 と表すことが出来ます註)。
註)形式的には気温を大気中CO2濃度の時間変化率を独立変数として表現することも出来ます。しかしこれは現象的には非常に考えにくいことです。CO2地球温暖化仮説に立つならば、あくまでも大気中のCO2濃度そのものが気温に関係付けられなければなりませんから、この場合はCO2地球温暖化仮説以外の説明が必要になります。私にはそのような説明を想像することが出来ません。
この一次関数のy軸の切片である 1.47ppm/年は、気温が平均気温(1971〜2000年の30年平均値)に等しいときには大気中CO2濃度は年率 1.47ppm上昇することを示しています。x軸の切片である -0.62℃は、気温が平均気温よりも 0.62℃低ければ大気中CO2濃度は変化せず、定常状態になることを示しているのです。
以上から、私たちの分析対象期間(1969〜2004年の35年間)について、大気中のCO2濃度が年率1.5ppm程度の上昇傾向を示している原因は、この間の気温がCO2濃度が定常状態になる気温よりも平均的に見て0.6℃ほど高温状態で推移したためだと考えられます。
Keeling曲線が示した『気温変動が大気中CO2濃度の変動成分の変動に先行する』という関係は、気温が大気中CO2濃度の時間に対する変化率を変化させているという関係を得る重要な手がかりを示唆したものだったのです。そしてこの結果は、南極の氷柱の分析などによって示されたのと同様に、現在においても気温が高くなることによって結果として大気中のCO2濃度が高くなることを示したのです。CO2地球温暖化仮説は幻想だったのです。
No367 (2008/12/22)
図解Keelingのグラフ解釈に対する考察 その6
2.Keeling曲線の示唆するもの
2-3 Keeling曲線を検証する
前節までの検討から、Keeling曲線の意味は理解できたものと思います。そこで、私たちはKeeling曲線を再現するだけでなく、Keelingの取り除いた長期的な傾向までを含めた関係を調べることにしました。そのために使った手法はCO2濃度と気温偏差について直接比較するのではなく、両者の変化率=微分係数を比較することです。
まず、周期変動関数の微分に関する性質を見ておくことにします。例としてsin関数を考えます。sin関数は周期2πの周期変動関数です。sin関数には微分に関して次の性質があります。
[sin(x)]’= cos(x) = sin(x + π/2)
つまり、sin関数を微分した関数は曲線の形は変わらずに位相がπ/2、つまり1/4周期だけ進むのです。グラフに描けば座標軸の負の方向に1/4周期移動することになります。
Keeling曲線が示すように、CO2濃度のエルニーニョ・スケールの不規則変動と世界月平均気温偏差の変動が1年程度の位相差を持つ相似形の曲線であれば、大気中CO2濃度と世界月平均気温偏差の両方を微分することによって得られる曲線を比較することで、その位相差を確認することが出来るはずです。

実際には、大気中CO2濃度について1年当たりの平均変化率(=時間微分)を求めることにしました。前回の表現を使い、季節変動を除いた大気中CO2濃度を時間微分すると次のようになります。
[大気中CO2濃度]’ = [315 + 1.5t + 0.8sin[4]]’= 1.5 + Acos[4],ここにAは定数。
これが上の模式図に示した大気中CO2濃度の平均変化率の曲線です。注目すべき点は、この曲線の振幅の中心は1.5ppm/年、つまり大気中CO2濃度の長期的な上昇傾向を示していることです。
世界月平均気温偏差についても同様の平均変化率を求めたのが桃色の曲線です。こちらは元々期間の平均気温に対する偏差ですから、振幅の中心は0のままになります。
実際のKeelingのCO2観測値と、気象庁による世界月平均気温平年差に対して平均変化率を求めたものを次図に示します。
私たちの得た平均変化率についてのグラフに対して、気象学会誌『天気』の査読者は、本質的にKeeling曲線を追認しただけだと言う批判を行いました。しかしこれは全くこのグラフの意味を理解していないのです。
Keelingのグラフでは、CO2濃度の長期的な変動傾向を取り除いているため、CO2濃度の変動を再現することは出来ません。しかしこのグラフは長期的な傾向を含んだものであり、ここに示したCO2濃度変化率の曲線を積分することによって季節変動を除いたCO2濃度の変動を再現することが出来るのです。
このグラフから、まずKeeling曲線同様に、気温変動が先に起こり、1年程度遅れて大気中のCO2濃度が変動することが分かりました。つまり、気温変動が原因となって、結果として大気中CO2濃度の変動が起こっていることが確認されたのです。
更にこのグラフから明らかになったことは、二つの曲線の振幅の中心の値を比較することによって、気温が変化しないときにおいても大気中CO2濃度は年率1.5ppmで増加することが示されたのです。これは重大な意味を持っています。仮に、CO2地球温暖化仮説が主張するように、大気中のCO2濃度の変化によって気温が変化するのであれば、1.5ppmのCO2濃度上昇があれば気温も上昇するはずではないでしょうか?つまり、CO2地球温暖化仮説はここに完全に破綻したのです。
さて、二つの物理量が位相差をもって相似な形状で現われる不規則変動関数の場合、この二つの物理量の間にどのような関係が考えられるでしょうか?まず一つは原因となる物理量の変化がもう一つの物理量の変化として現われる過程が複雑で、原因の発生から結果の発生までに遅れが生じる場合です。しかしこれ以外の場合もあります。例えば、原因となる物理量の変化がもう一方の物理量の変化率を支配する場合です。
槌田氏は、このグラフの観察から二つの重要な発見をしました。
まず、前述の通り、気温偏差の変化率が0の場合においてもCO2濃度変化率は1.5ppm/年の値を示し、気温偏差の変化率が正の場合には更にCO2濃度変化率は大きくなり、逆に負の場合は小さくなることです。このことから槌田氏は、気温の変化率ではなく、気温レベルそのものがCO2濃度変化率と関連していると予想しました。
更に、両曲線間の位相差に注目し、世界月平均気温偏差の変化率の0点がCO2濃度変化率の極値に対応しているのではないかと予測したのです。
No366 (2008/12/21)
図解Keelingのグラフ解釈に対する考察 その5
2.Keeling曲線の示唆するもの
2-1 大気中のCO2濃度の構成
これまでの検討から、大気中に存在するCO2の総量と地表環境からの発生源毎の年間CO2排出量が把握できれば、大気中CO2の排出源別の構成の概略を推定することが出来ることがわかりました。
ここで、下図に示すIPCC第二次報告の炭素移動量を現在値として、過去40年間の大気中CO2濃度の変化と、その構成を推定してみることにします。
炭素循環図の値から試算した大気中CO2濃度の構成を表に示します。ただし、
@過去40年間において、大気中CO2濃度は年率1.5ppmの割合で増加し、
A40年前の化石燃料燃焼による年間CO2放出量は現在の半分の3Gt/年、
Bその他の排出源については変化しない
という仮定の下の試算です。
| 現在値 | 40年前 |
年間排出量 | 大気中濃度 | 年間排出量 | 大気中濃度 |
| 化石燃料燃焼 | 6Gt/年 | 10.9ppm | 3Gt/年 | 4.7ppm |
| 呼吸(陸上生態系) | 50Gt/年 | 91.0ppm | 50Gt/年 | 77.6ppm |
| 非生物(風化・海洋とのガス交換) | 150Gt/年 | 273.1ppm | 150Gt/年 | 232.8ppm |
| 合計 | 206Gt/年 | 375ppm | 203Gt/年 | 315ppm |
| 年間吸収率 | 0.242 | 0.278 |
この試算の結果をグラフ化したものを下図に示します。
この模式図では、呼吸については季節変動=1年周期、非生物についてはエルニーニョ・スケールの変動を模して4年周期のサイン曲線で表される変動成分を加えて表しています。具体的には、
[呼吸によるCO2濃度] = 77.6 + 0.335t + 7.5sin[1]
[非生物によるCO2濃度] = 232.8 + 1.01t + 0.8sin[4]
[化石燃料燃焼によるCO2濃度] = 4.7 + 0.155t
[大気中CO2濃度] = 315 + 1.5t + 7.5sin[1] + 0.8sin[4]
ただし、t は経過年数、sin[1]は1年周期のサイン曲線、sin[4]は4年周期のサイン曲線を表しています。
2-2 Keeling曲線の意味
前の模式図を元に、40年前の大気中CO2濃度を原点とした増加量を次図に示します。併せて、呼吸の季節変動成分と非生物のエルニーニョ・スケールの変動成分を示しておきます。
上図における『CO2濃度観測値』とは、40年前の大気中CO2濃度を原点として、長期の変動傾向と、呼吸と非生物の変動成分を加えたものです。具体的には、
[CO2濃度観測値] = 1.5t + 7.5sin[1] + 0.8sin[4]
いわゆるKeeling曲線に示しているCO2濃度の変動とは、このCO2濃度の観測値から長期的な上昇傾向と呼吸の季節変動成分を差し引いたものです。つまり、
[Keeling曲線のCO2濃度] = 0.8sin[4]
です。これは、上図において0点を振幅の中心とする桃色のサイン曲線に対応する非生物変動成分です。
ただし、ここに示した模式図は、あくまでも議論を単純化するために簡略化した試算によるモデルであることに注意してください。実際には、おそらく呼吸によるCO2排出についてもエルニーニョ・スケールの変動の影響があるはずですが、季節変動の振幅に比べて小さいであろうという推定から、ここでは無視しています。その他についても同様ですが、これに関しましては今後の観測によって明らかにするしかありません。
さて、ではここで実際の観測値を示しておくことにします。次図はKeelingによるハワイにおける観測データを示したものです。
赤色で示した観測データから季節変動成分を取り除く(例えば1年の移動平均を取る)ことで桃色で示した数年周期の不規則変動を求めます。更に長期傾向、例えば上図の緑色で示した回帰曲線からの偏差を求めることによって、いわゆるKeeling曲線に示されたCO2濃度変動に類似の曲線を得ることが出来ます。
実際のKeeling曲線について、気象学会誌『天気』(気象学会誌「天気」2005年6月号pp.71-72/河宮未知生)によると次のようにして求めている様です。
ここで,第1図の気温の変化は,Hansen and Lebedeff(1988)のデータを一部変更したもので,全球平均の月平均気温をスプラインでつないだものを1951-1970年の平均値からのずれとして示したもの.CO2はマウナロアと南極観測点での平均値で,長期的な上昇曲線と季節変化は抜いてあり,年々変動のみを見ているものです.
ただし、この説明だけでは具体的に長期傾向としてどのような値を用いたのかは不明なので、残念ながらKeeling曲線を完全に復元することは断念しました。
さて、Keeling曲線のもう一つの要素は全球の月平均気温の期間の平均値からの偏差です。注意すべき点は、気温については平均値からの偏差であって、CO2濃度の場合のように長期的な変動傾向は取り除かれていないということです。CO2濃度の変動部分と気温偏差の変動の模式図を示すと次のようになります。
CO2濃度の変動成分と全球月平均気温偏差の変動を表す曲線は、模式図ように相似の波形ですが、少し位相にずれが生じます。模式図ではいずれの曲線もサイン曲線であるため、CO2濃度の変動が気温変動の先に起こるのか後に起こるのかを判断できません。
次に実際のKeeling曲線を示すことにします。
実際のKeeling曲線では、変動は不規則なため、前後関係を特定することが出来ます。気温の変動が先で、1年程度の遅れでCO2濃度が変動するのです。
つまりKeeling曲線は、気温とCO2濃度の間に現象的にどのような関係が有るのかまでは特定できませんが、少なくとも気温変動が原因となって、その結果としてCO2濃度が変動することを示したのです。
このKeeling曲線に対して、河宮氏は前掲書の中で『二酸化炭素の経年変化を示した第1図(Keeling et al.,1989のp.210のFig.63:根本,1994のp.151の図7-4)に因れば,気温の変化が二酸化炭素の変化に1〜1.5年先行しているように見えます.これはどのように考えたらよいでしょうか?』という問いに対して次のように述べています。
回答:問題とされている図に関してまず注意しなければいけないのは,質問中でも指摘されている通り,二酸化炭素の長期的な上昇傾向が除いてあるという点です.地球温暖化の原因となるのは正にこの長期的上昇傾向です.それが取り除かれたこの図で表されているのは自然起源の変動であり,人間活動に端を発する地球温暖化とは比較的関連の少ないものと言えます.(後略)
河宮氏の『回答』は、これまでの検討から分かるように全く現実を無視したものです。彼は、大気中CO2濃度の長期変動の主因が人為的なCO2排出であるとしています。つまり、人為的CO2蓄積モデルが正しいと信じて理論を組み立てているのです。
しかし現実には循環モデル以外に合理的な解釈は無く、循環モデルによれば『大気中CO2濃度の構成』で示したとおり、長期的な傾向に対する人為的な影響=化石燃料の燃焼の影響はわずかであり、大部分は自然変動なのです。
また、問の趣旨は、
気温変動がCO2濃度変動に先行する理由を求めているわけですが、なぜか河宮氏はこの点には明確に答えていません。無理やりに解釈すれば『この図で表されているのは自然起源の変動であり,』、自然変動については気温変動が先に起こり、CO2濃度変動はその結果として起きると言うのかもしれません。いずれにせよ、このKeelingの図からは、CO2地球温暖化仮説を支持するような現象を読取ることは出来ません。回答は完全に破綻しています。
No365 (2008/12/20)
図解Keelingのグラフ解釈に対する考察 その4
1-2 大気中のCO2濃度の数学モデル
1-2-3 非定常状態を表す循環モデル
人為的CO2蓄積モデルは明らかにエントロピー増大則に反するモデルであり、現実の自然界では起こり得ないので、これ以上の検討の必要はありません。以降は一様混合大気に対するCO2蓄積モデルについてだけ検討することにします。
CO2蓄積モデルでは、閾値=地表環境からの年間CO2排出量200Gtを境にして、200Gtまでは循環過程の定常状態を維持し、これを越えた部分は蓄積モデルに従うという仮定の下に成り立っています。しかし、常に乱流拡散・分子拡散によってかき混ぜられている現実の大気を考えれば、大気の特定部分だけが他と違う振る舞いをし続けるというのは、やはりあり得ないことです。
さて、循環モデルでは地表環境と大気との間でCO2が交換されていることに基づいて、定常状態に対して次のように表しました。
qout = rQ = qin , ここに、r :年間吸収率
つまり、大気中に存在する一様に混合している全てのCO2が全く同じ年確率 r で地表環境に吸収されることを主張しているのです。そして、大気中から失われたCO2量qoutと同じだけの地表環境からのCO2排出量qinの供給が失われたCO2量を補うのです。定常状態にある大気中のCO2量は、地表環境からの年間CO2排出量qin と地表環境の年間吸収率 r を定数とすることによって、等比級数モデルとして表せたのです。
では非定常な場合の循環モデルはどのように表されるのでしょうか?大気中に存在する一様に混合している全てのCO2が全く同じ年確率 r で地表環境に吸収されるという循環モデルの基本的な関係は変更する必要はありません。ただ、大気中のCO2濃度が非定常に変化する原因=地表環境の変化をモデルに取り入れる必要があります。具体的には、モデルに現われる量を時間tの関数として取り扱うことが必要になります。つまり、
qout(t) = r(t)Q(t)≠ qin(t), ここに、r(t) :年間吸収率
もし、qout(t) <qin(t) の関係にあれば大気中CO2量Q(t)は増加し、逆にqout(t) >qin(t)であれば減少することになります。
r(t)の具体的な意味を考えてみましょう。炭素循環図を見ると、大気からCO2を吸収する主要な現象は植物の光合成と海洋の吸収です。この二つの条件は産業革命当時と現在ではかなり違ってきている可能性が高いと考えられます。
例えば、陸上では都市化が進むと同時に森林伐採が進み、農地の砂漠化も進んでいます。これは陸上植物の光合成活性度=大気中CO2吸収量の低下になる可能性を示唆しています。
またこの間、地球の平均気温は小氷期後期から引き続く上昇傾向を示しています。海洋表層の水温も同じ傾向を示します。海洋表面におけるガス交換はヘンリーの法則から、気温が高くなれば海洋表層水のCO2溶解度は小さくなりますから、これも大気中CO2吸収量の低下として現われる可能性が高いと考えられます。
年間吸収率 r(t) は産業革命当時から次第に小さくなっていることが推測されますが、その詳細についてはここでの議論の範囲を超えますのでこれ以上触れませんが、一般的に言えることは年間吸収率 r(t) や地表環境からのCO2排出量qin(t)は非定常に変化するということです。
さて、CO2蓄積モデルについてもう一度考えることにします。CO2蓄積モデルでは、蓄積過程によって処理されるCO2に対して、初年度には排出された量の半分が減少します。この減少したCO2はどこに行くのでしょうか?消滅するか宇宙空間に放出されるのでなければ、やはり地表環境に吸収されるしかないのではないでしょうか?つまり蓄積過程とは、初年度の年間吸収率 r1 = 0.5 、2年目以降の年間吸収率 rn(n=2,3,4,5・・・)= 0 とした場合の非定常循環モデルの特殊な場合と考えることが出来ます。
しかし現象的に考えると、一様に混合した大気中のCO2の中で、一部分のしかも初年度の年間吸収率だけが特別な値になるということは、エントロピー増大則に反する不合理なモデルだと考えます。私たちは大気中で一様に混合したCO2は全て同じ循環過程に従うことが最も合理的だと考えます。
非定常循環モデルの大気中CO2濃度の経年変化を考えることにします。定常状態における循環モデルの場合と同様に、(n+1)年目期首における大気中のCO2量Q(t)は次のように表すことが出来ます。
Q(t)=qin1×(1−r1)(1−r2)(1−r3)・・・(1−rn)
+・・・
+qin(n-1)×(1−r(n-1))(1−rn)
+qin(n)×(1−rn)
+qin(n+1)
この場合について、自然起源のCO2排出量を炭素重量で200Gt、人為起源のCO2排出量を6Gtとした場合の単年度分のCO2排出量の10年目までの経年変化を次の図に示します。

図は、rn<r(n-1) つまり、年間吸収率が減少傾向を示す場合について示しています。重要なことは、定常状態の循環モデルであろうと非定常循環モデルであろうと、残存するCO2量に含まれる人為起源のCO2量の割合は常に6/206で一定なのです。
実際には地表環境からのCO2排出量は、人為起源のCO2排出量に着目すれば産業革命前の0Gtから現在の6Gt程度にまで増加しています。つまり、過去に遡るほど人為起源のCO2量の混合比率は小さいのです。大気中ではこれが一様に混合していますから、現在の大気に含まれる人為起源のCO2の割合は6/206よりも小さいのです。
一般的には、人為的CO2排出量が単調に増加していると仮定すれば、現在の大気に含まれるCO2量に、現在の地表環境からの総CO2排出量に対する人為起源のCO2排出量の割合をかけてやれば、多少多めに見積もった大気中に残存する人為起源のCO2量を推定できるのです。
試算4.循環モデルによる現在の大気
人為的CO2蓄積モデルの条件は、人為的なCO2排出以前の定常状態はそのまま継続するとして、これに加えて人為的なCO2排出量の半量程度が大気中に蓄積するというものです。この場合、循環部分については条件は変化しないのですから、試算1.で示した r = 0.3 はそのまま変化しないことになります。
この条件に従えば、循環モデルは r = 0.3 の等比級数モデルになります。実際には人為的な排出量は0Gtから6Gtに増加することになりますが、ここでは人為的な影響を大きめに見積もって6Gtに固定しておきます。等比級数モデルでは地表環境からのCO2排出量の変化の影響は急速に一定値に収束し、r = 0.3 の場合、定常状態(=最大値)では大気中CO2量は総CO2排出量の2.83年分になります(試算1.参照)。つまり、自然起源の排出量200Gtに人為起源の排出量6Gtが加わった場合の大気中に存在する平均的なCO2量は、 Q = 2.83×(200+6) = 583Gt になります。
人為的なCO2排出量増加の影響はわずかに 583 - 566 = 17Gt、CO2濃度に換算して8.5ppmの上昇にしかならないのです。この点について槌田氏は過去45年間の実際の観測値を元に物理学会誌(日本物理学会誌 Vol.62, No.2, 2007「CO2 を削減すれば温暖化は防げるのか」)において次のように報告しました。
人間が毎年排出するCO2 についても,その30%は陸と海に吸収され,70%が大気中に残る.この量はCO2 温暖化説で大気中に溜まるという55.9%よりも多い.
しかし,今年溜まった70%の人為的CO2 がいつまでも大気中に残ることはない.去年の分は70%の70%,つまり49%しか残っていない.一昨年の分は70%の70%の70%,つまり34.3%しか残っていない.
この人為的CO2 の大気中に溜まる量の最大値は,
0.7+(0.7)2+(0.7)3+・・・=0.7/(1-0.7)=2.33
と簡単に計算できて,人為的排出で溜まるCO2 の量は最大でも2.33 年分でしかない.これは一定割合で目減りする(負の利息の)定額貯金のようなものだ.
大気中のCO2 で過去45 年間に増加した64ppm は人為的排出量の25.2 年分に相当するから,2.33 年分はその9%である.したがって,全体の増加量64ppm のうち,人為増加量は9%の6ppm で,残りの58ppm は気温などにより陸海から放出された自然増加量だったのである.
(近藤註:ここの2.33年分は期末の残存量です。)
この槌田氏の主張に対する阿部氏の反論は的外れなものです。前掲の阿部氏のレポートで次のように述べています。
・・・最初の計算における,大気中のCO2 総量が増えても常に30%交換されるという仮定は,海と陸のCO2 吸収能力がCO2 濃度変化にすぐに追随することを前提としている.しかし,実際にはCO2 吸収能力の応答時間にはさまざまなものがあり,遅いものでは海の表層と真相の交換に関わる数百〜数千年の時間スケールもある.2)人為的に排出されたCO2 の一部は吸収の増加で補償されるが,残りは大気中の純増(蓄積)になっているというのは,十分にありうることだと思う.
下線部分の阿部氏の主張は、地表環境のCO2吸収率を r = 0.3 に固定したことを不合理と述べているわけですが、これは私もその通りだと思います。しかし、これは冒頭で述べたように、人為的CO2蓄積モデルが成立するための条件なのです。
もし吸収率が変化すると、大気中に含まれる自然起源のCO2量が変化してしまうので、人為的CO2蓄積モデルの前提が崩れてしまうことになるのです。槌田氏はあくまでも人為的CO2蓄積モデルの条件を用いた試算を行ったに過ぎないのです。その結果、循環モデルに従えば人為的CO2排出量の増加では現実を説明できないことを主張したのです。
また、次に示すように現実の大気中CO2濃度を表すように吸収率 r を調整しても(=非定常循環モデル)槌田氏の主張の本質は変わらないのです。阿部氏は揚げ足を取っただけで具体的な検討を怠ったようです。
さて、前述の通り『一般的には、人為的CO2排出量が単調に増加していると仮定すれば、現在の大気に含まれるCO2量に、現在の地表環境からの総CO2排出量に対する人為起源のCO2排出量の割合をかけてやれば、多少多めに見積もった大気中に残存する人為起源のCO2量を推定できる』ので、これに従って現在の大気中に含まれる人為起源のCO2量を推定してみます。現在の大気中CO2量を750Gt、自然起源の年間CO2排出量を200Gt、人為起源の年間CO2排出量を6Gtとします。
大気中には平均的に見て地表環境からの年間CO2排出量の 750/(200+6) = 3.64 年分のCO2が存在します。期首におけるCO2量は平均的な値+0.5 年分なので 4.14 年分になります。つまり、地表環境の年間CO2吸収率は、r = 1/4.14 = 0.24 になります。自然起源のCO2排出量200Gtが変化しなかったとすると、産業革命以前の値 r = 0.3 に比較して、現在の地表環境はかなりCO2吸収率が下がっているようです。
大気中CO2量750Gtに占める人為起源のCO2量は 、6/(200+6) = 0.029 なので最大でも 750×0.029 = 21.8Gt =10.9ppm を越えることは無いのです。
循環モデルによる推定値は、試算3.のCO2蓄積モデルによる推定値19.2Gt = 9.6ppm とほとんど変わらないのです。実は、どのようなモデルを使っても、
@地球環境から排出されるCO2は一様に混合しており、
A大気中CO2量を適切に表現している
限り、大気中に含まれる人為起源のCO2量の推定値には大きな差は生じないのです。
二つのモデルの特性の違は、循環モデルは近い過去の影響ほど強く、過去に遡るほど影響が小さくなるのに対して、蓄積モデルでは時間経過による影響の違いが生じないのです。だから、人為的CO2排出量が単調に上昇しているという条件の下では、最近の影響をより強く受ける循環モデルの方が多少大きめの値を示すのです。
1-3 結論 CO2濃度上昇の主因は自然変動
以上の検討から、産業革命以降に観測されている大気中CO2濃度の90ppm程度の上昇分の内、人為的なCO2排出の増加による影響はどのように見積もっても高々11ppmにも満たないのであり、大気中CO2濃度上昇の主因は人為的なCO2排出ではありえないことが明らかになりました。
また、急速に混合の進む対流圏大気の特性から考えて、近年のCO2濃度の変動を最も適切に表現できるのは循環モデルであり、CO2蓄積モデルはエントロピー増大則に反する不合理なモデルなのです。
仮にCO2地球温暖化仮説が正しかった場合でも、人為的なCO2排出量の削減努力によって大気中CO2濃度を劇的に減らすことは出来ないのであり、温暖化対策としての人為的CO2排出量削減は無意味なのです。
No364 (2008/12/19)
図解Keelingのグラフ解釈に対する考察 その3
1-2 大気中のCO2濃度の数学モデル
1-2-2 非定常状態を表す蓄積モデル
さて、Keelingは彼の行った南極とハワイにおける大気中CO2濃度の連続精密観測のデータから、近年の大気中CO2濃度の上昇量は、人為的な石炭や石油をはじめとする炭化水素燃料の燃焼によって排出されているCO2=「人為的CO2排出量」の半量程度に相当すると発表しました。これについては原著を読んでいないので、彼の主張の主旨が単に量的に見て人為的CO2排出の半量程度に相当すると言っただけなのか、あるいは人為的CO2排出量の半量が蓄積することによって大気中CO2濃度が上昇するという現象が起こるのだと主張したのかは定かではありません。
しかし、その後の標準的な人為的CO2地球温暖化仮説においては、明らかに人為的CO2排出量の半量程度が大気中に蓄積することによって近年の大気中CO2濃度が上昇していると主張するようになりました。このことが現在の温暖化対策としてCO2排出量削減が叫ばれている「理論的」背景となっています。しかし、この人為的CO2蓄積仮説は、冷静に考えると子供の思いつき程度の考えに過ぎず、とても科学的な評価に値するものではありません。

大気中CO2濃度が定常状態にあった状態から、何らかの理由、ここでは人為的なCO2排出量の増加によって、地表環境から大気へのCO2排出量が qin から(qin+冫in)に増加した場合を考えます。蓄積仮説ではこの内 qin については以前の定常状態のままであり、増加した冫inの半量程度が永久に(!)大気中に留まり続けると考えます(上図の下の図)。
定常部分と蓄積部分について単年度分(上図の桃色に着色した部分)についてだけ取り出してその経年変化を考えてみます。具体的な数値として前掲のIPCC第2次報告を元にした炭素循環図の値を使用します。つまり、qin = 200Gt、冫in = 6Gtとします。
定常部分に含まれる200GtのCO2は、年率30%の割合で減少してゆきます。10年後には5.65Gt、当初の3%以下にまで減少します。これに対して蓄積部分は、初年度期末までに6Gtから3Gtに減少した後は、永久に3Gtのまま大気中に蓄積し続けることになります。
ここで大きな疑問が生じます。初年度で減少した3GtのCO2は一体どこに消えたのでしょうか?これがいわゆる「ミッシング・シンク」と呼ばれる問題です。この問題については後で検討することにします。
A. 人為的CO2蓄積モデル
さて、はじめに標準的な人為的CO2地球温暖化仮説の元になる人為的CO2蓄積モデルについて考えることにします。

人為的CO2蓄積モデルでは、自然起源のCO2である200Gtは等比級数モデルに従って年とともに減少しますが、人為起源のCO2(赤で着色)である6Gtは初年度に半減した後は変化せずに大気中に蓄積されると主張しています。
しかし、このモデルは実際には物理学の法則を無視したあり得ないモデルです。すでに「1-1 対流圏大気の性状」で示したとおり、大気中に放出されたCO2は大気中で急速に攪拌されて発生源の如何、発生年次の如何を問わず一様に混合・拡散しています。一様に混合した大気中のCO2の中から、自然起源のCO2と人為起源のCO2が再び「分離」して、自然起源のCO2は等比級数モデルで表現される循環過程に従って振舞い、人為起源のCO2は蓄積過程に従って振舞うということは、拡散・混合エントロピーが減少しない限り起こり得ません。自然界ではエントロピーが減少するような現象は起こらないというエントロピー増大の法則に照らして、人為的CO2蓄積モデルは不合理なのです。
試算2.人為的CO2蓄積モデルによる現在の大気
このモデルを使って、産業革命から今日に至る大気中CO2濃度について試算してみます。
試算1.から、産業革命以前の定常状態では、大気中に含まれるCO2量は炭素重量で566Gt(283ppm)でした。これに対して、IPCC第2次報告では大気中に含まれるCO2量は750Gt(375ppm)です。つまり、大気中には(750−566)=184Gt(92ppm)の人為的CO2が蓄積されていることになります。産業革命からの経過年数を200年とすると、平均的には年率0.92Gtの人為的CO2が蓄積されたことになります。IPCC第2次報告(1995年)当時は、年率6Gt程度の排出がありますので、蓄積量は3Gtです。
B. CO2蓄積モデル
人為的CO2蓄積モデルは物理法則を無視した子供の発想でした。そこで少しこれを修正してみます。これは消極的な表現ですが、物理学会誌に掲載された阿部氏の発言『人為的に排出されたCO2 の一部は吸収の増加で補償されるが,残りは大気中の純増(蓄積)になっているというのは,十分にありうることだと思う.』(日本物理学会誌 Vol.62.No.7,2007『会員の声』CO2 増加は自然現象だろうか/阿部修治,〈産総研〉)に現われています。
つまり、阿部氏の主張は蓄積モデルは否定していませんが、人為起源のCO2についても一部は循環過程に入ることを容認しているのです。これをもう少し物理学的普遍性を持つ=エントロピー増大の法則に抵触しないモデルにしようと思います。
まずその(暗黙の)前提ですが、地球大気中では循環過程(級数モデル)で処理されるCO2量には閾値が存在し、これを越えるCO2は蓄積過程で処理されるという仮定です。しかも、たまたまその閾値は産業革命以前の定常状態である年間排出量200Gtであるという、実にご都合主義の仮定ですが・・・(笑)。議論が先に進まないので、ひとまずこの仮定を承認しておきましょう。
人為的CO2蓄積モデルと異なるのは、自然起源のCO2と人為起源のCO2は一様に混合しており、その混合気体の内の200Gtは循環過程に、6Gtは蓄積過程に従って振舞うのです。下図において桃色で示した部分が一様に混合した気体(自然起源CO2:人為起源CO2=200:6)を表しています。

上図において、10年後に大気中に残存する人為起源のCO2の量を計算すると、(3+5.65)×(6/206)=0.25Gtになります。人為的CO2蓄積モデルの10分の1以下になるのです。
試算3.CO2蓄積モデルによる現在の大気
現在の大気に含まれるCO2量は750Gt、そのうち循環過程に含まれるCO2量は566Gt、蓄積過程に含まれるCO2量は184Gtです。
循環過程に含まれるCO2の内、人為起源のCO2量は等比級数モデルから6/206≒2.9%です。蓄積過程に含まれるCO2量に関しましては、人為的なCO2排出量は過去に遡るほど6Gtよりも小さくなりますから、平均的には多めに見積もって3Gtと仮定すると3/203≒1.5%とします。
以上から、現在の大気に含まれる人為起源のCO2量は、566×0.029+184×0.015=19.2Gt=9.6ppmということになります。
つまり、CO2蓄積モデルを仮定した場合でも、現在の地球大気に含まれるCO2、ここの試算では375ppmの大部分は自然起源のCO2であって、人為的なCO2排出量を削減してもその効果は微々たるものに過ぎないのです。
No363 (2008/12/18)
図解Keelingのグラフ解釈に対する考察 その2
1-2 大気中のCO2濃度の数学モデル
前節において、大気中に放出されたCO2は排出源の如何、あるいは排出年次の如何に関わらず速やかに対流圏大気中に一様に拡散することが分かりました。ここでは、大気中に放出されたCO2の経年変化を表す数学モデルを考えることにします。
1-2-1 定常状態を表す等比級数モデル
大気中に含まれるCO2量が変化しない場合のモデルを考えることにします。まず、IPCC第2次報告に基づいて作成した地球における炭素循環の概略を次の図に示します。矢印は1年間の移動量を表しています。

この図から、大気中のCO2量が変化しない場合でも、大気中のCO2は常に地表環境との間でガス交換が行われていることがわかります。地表環境からは呼吸(50Gt)、岩石の風化(60Gt)、海洋とのガス交換(90Gt)を併せて年間約200Gt(炭素重量)のCO2が大気中に放出されています。同時に、大気からは光合成(110Gt)、海洋とのガス交換(90Gt)の併せて約200GtのCO2が地表環境に吸収されています。
つまり、大気中に存在するCO2量が変化しないという状態は移動のない平衡状態ではなく、大気へのCO2流入量と大気からのCO2流出量が等しい『定常状態』なのです。下図の記号を使えば、qin = qoutと書き表すことが出来ます。
IPCCによると、大気中に含まれるCO2の内、年間30%程度が交換されているそうです。大気中に含まれるCO2量Qの30%がqin、あるいはqoutと等しくなるのです。つまり、
qin = qout = 0.3Q = rQ, ここに、r = 0.3
rのことを(年間)吸収率と呼ぶことにします。rの物理的な意味は、大気中でCO2排出源や排出年次の如何に関わらず一様に混合・拡散したCO2に対する1年間の吸収確率ということになります。
ここで、定常状態にある大気について、大気中に含まれるCO2量の経年変化を見ることにします。ここでは議論を簡単にするために、1年毎の離散的な表現を用いることにします。初期状態において大気中に含まれているCO2量をQ0(Gt)とし、(年間)残存率を(1-r)とします。地表環境から大気に放出されるCO2量をqin(Gt/年)とします。
1年目期末 Q=Q0×(1−r) + qin×(1−r)
2年目期末 Q=Q0×(1−r)2 + qin×(1−r) + qin×(1−r)2
・・・
n年目期末 Q=Q0×(1−r)n + qin×(1−r) + qin×(1−r)2+・・・+ qin×(1−r)n
(n+1)年目期首の大気中の二酸化炭素量はn年目期末の式にqinを加えることによって求められますので、等比級数の和の公式より次式で計算することが出来ます。
Q=Q0×(1−r)n + qin×{1−(1−r)(n+1)}/r
大気中のCO2量Qの定常状態は、n→∞の極限を求めることによって次のように表すことが出来ます。
Q = qin/r (= qout/r)
つまり、初期状態Q0の如何に関わらず、定常状態に達したときのCO2量Qは、地表環境からの入力qinと地表環境の吸収率rだけで決まるのです。この結果は冒頭に示したIPCCの主張と矛盾なく一致する数学モデルです。
以上に示した『等比級数モデル』について、r = 0.3 とした場合の経年変化をn = 10年目までグラフに表したものが次の図の上の図です。
1年間の離散的なモデルとしましたので、Qの経年変化はノコギリ状になります。ノコギリの頂点は、期首におけるQの値であり、上式からQ = qin/0.3 = 3.33qinであり、ノコギリの谷は期末におけるQ、あるいはQ0の値であり、2.33qinになります。平均的に見れば、大気中には地表環境からの1年間のCO2排出量の2.83年分が存在すると考えることが出来ます。
試算1.産業革命以前の定常状態
一般的に、産業革命以前では大気中CO2濃度は280〜285ppm程度で安定(=定常状態)していたと考えられています。地表環境からの年間CO2排出量を qin = 200(Gt/年)、大気中のCO2の炭素重量2Gtが1ppmに相当するとします。地表環境の吸収率を r = 0.3 とすると、大気中に存在する平均的なCO2量は、2.83qin = 566Gt = 283ppm となり、概ね妥当な値だと考えられます。

No362 (2008/12/17)
図解Keelingのグラフ解釈に対する考察 その1
ぼやき・・・
長らくこのHPではKeelingの大気中CO2濃度の短期的な変動と世界平均気温偏差の変動を示したグラフについて考察してきました。この件に関して、気象学会や物理学会のカッコつきの『研究者』諸君と論争を続けていますが、人為的CO2地球温暖化仮説に凝り固まった彼らの硬直した思考を未だ解きほぐせずにいます。
このところ、彼ら『研究者』を念頭に置いたレポートが多かったのですが、彼らの頭の中は人為的CO2地球温暖化仮説を絶対的な真理とするところから議論が始まるためにとんでもない誤りを犯しているようです。いずれこのHPで公開する機会が来るかもしれませんが、気象学会誌『天気』の査読者、気象学会の大御所の査読意見にはあきれ果てています。何と理解能力の低いことか!どうも彼らを納得させるためには中高生に説明するように懇切丁寧な説明が必要なようです。
また、これとは別に自称『研究者』という拙HPの閲覧者から頓珍漢な難癖のメールを頂きました。どうも『研究者』という人種は総じて思考が硬直化した自分の尺度でしか物を見ることが出来ない誇大妄想に犯された人が多いようです。アマチュアの人為的CO2地球温暖化仮説愛好者然り。『研究者』たる俺が言うのだから間違い無いのであって、どこの馬の骨とも知らないお前のいうことは間違いである、ということのようです。
それはさておき、この間のレポートにおける議論は対『研究者』用でしたので、一般の読者にとっては分かりづらいこともあったと思いますので、この際、私たちの主張を多くの人、中学高校の理科・数学をある程度学んだ人に理解していただけるようなレポートを構想しています。出来るだけ図面を利用して数式が苦手な方でも視覚的に理解できるようにしたいと思います。また、『研究者』諸君の理解の一助となることを祈念しています(笑)。では、以下本題に入ります。
0.はじめに
世界的に人為的CO2地球温暖化仮説が正しいものとして、温暖化対策と称して石油燃料の燃焼を抑制することで大気中のCO2濃度を削減して温暖化を食い止めようという政策が始められようとしています。もとより、希少有用資源である石油を始めとする化石燃料の浪費を抑えることには異存はありませんが、それが温暖化対策となると多くの問題を含んでいます。
人間の社会的な対応としてのこうしたCO2排出量削減という温暖化対策が有効であるためには、まず第一に確認しておかなくてはならないことは、『近年観測されている大気中CO2濃度上昇の主因が人為的な石油燃料の燃焼によるCO2排出による』か、否かです。
本稿は、大気中CO2濃度の連続精密観測を行っているKeelingの観測結果からの報告を正しく理解することを目的にします。その内容は二つです。
まず第一は、前述の通り、『近年観測されている大気中CO2濃度上昇の主因が人為的な石油燃料の燃焼によるCO2排出による』か、否かを明らかにすることです。
そして第二に、観測事実から大気中CO2濃度と気温の変動の因果関係として、CO2地球温暖化仮説が主張するように、大気中CO2濃度の増加が原因となって気温が上昇するという事実があるのかどうかを確認することです。
以上の観点から議論を進めることにします。
1.CO2濃度上昇の原因は石油の燃焼か?
1-1 対流圏大気の性状
対流圏の大気組成の概略は、以下の通りです。
気 体 名 | 分子量 | 大気組成 % | 定圧比熱 cal/g・℃(m2/s2・℃) |
ヘリウム | 4.003 | 5.24×10-4 | 1.25 ( 5232) |
水 素 | 2.016 | 5×10-5 | 3.39 (14189) |
窒 素 | 28.013 | 78.09 | 0.25 ( 1046) |
酸 素 | 31.999 | 20.95 | 0.22 ( 921) |
二酸化炭素 | 44.010 | 0.04 | 0.20 ( 837) |
水 蒸 気 | 18.015 | 〜3.00 | 0.49 ( 2051) |
乾 燥 空 気 | 28.966 | 100.00 | 0.24 ( 1004) |
この値は、対流圏の大気ではどこでもほぼ同じ値になります。しかし少し考えると不思議なことです。地球のような重力場であれば、重い気体ほど下に、軽い気体ほど上に重なる密度成層構造を持つことも考えられます。なぜ対流圏では大気組成が一様なのでしょうか?
まず微視的な点から考えることにします。気体を構成する分子は、分子量と温度状態によって定まる速度分布を持っており、常に空間の中を移動しています。下図は、25℃におけるヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンの分子速度の分布を示したものです。
仕切りのある箱の中に一方には気体A、もう一方には気体Bを入れておき、仕切りを取り外します。すると気体分子が運動する結果、次第に二つの気体は一様に混合することになります。
このように、微視的な分子運動によって二つの気体分子が一様に混合するような現象を分子拡散と言います。この時、気体Aは仕切りを取り外すことによって気体Bの存在する空間に一様に拡散します。逆に気体Bは気体Aの存在する空間に一様に拡散し、結果としてAとBが一様に混合した気体になります。この様子は熱学的には拡散エントロピーの増加を示しています。一様に混合した気体は、この容器内における拡散エントロピーが最大の状態に対応します。重要なのは、閉鎖系(ここでは閉じられた箱)のエントロピーは常に増大し、減少することはありません。つまり、一旦一様に混合した気体が再び混合する以前の状態に戻ることは無いのです。
このエントロピー増大則は法則であって、これに反するような現象は自然界では観察されていないのです。これは、後述する人為的CO2蓄積説の検討において決定的に重要な意味を持ちます。
気体の混合を起こす原因は分子拡散だけではありません。対流圏では、地表面で加熱された大気は膨張して密度が小さくなるために上昇傾向を持ちます。また、地表面環境から供給される水蒸気の分子密度18は大気密度29に比較して著しく軽いためにこれも上昇傾向を持ちます。これに地球の自転による影響が加わって地球全面に亘る大気の循環構造が存在します。
この様な巨視的な大気の流体運動による混合を乱流拡散と呼びます。
分子拡散と乱流拡散の相乗効果によって対流圏大気は、地域性あるいは高度による偏りの無い一様な大気組成の状態になるのです。
さて、CO2について考えてみることにします。CO2は大気を構成する気体の中では、地表環境とのガス交換速度の速い気体です。大気に含まれるCO2量は炭素重量で約750Gt、これに対して年間交換量は約200Gtにも達します。もしかすると地域によってCO2濃度には大きなばらつきがあるかもしれません。
次に示す図は、Keelingによるハワイのマウナロア測候所による観測値と、気象庁による綾里と南鳥島における観測値です。
この観測値を見ると、CO2濃度についても明瞭な地域性は認められず、よく対応しているようです。図に示した1990年にはフィリピンのピナツボ火山において大噴火があり、引き続く1993年までCO2濃度の上昇傾向が鈍化した特殊な時期ですが、これについても良い対応を示しています。
この観測結果からも、対流圏における大気の混合速度は大変速く、速やかに一様に混合が進むものと考えられます。